イブ誕SS
「お誕生日おめでとう、イブ!」 そんなニコの嬉しそうな声に、ようやくイブは、今何が起こったのかが理解できたのだった。 ククルからの呼び出しに応じて自由会議室に入るやいなや、突然の破裂音。その後、何故か拍手が聞こえて、そして、ニコの呼びかけ。その間、色んな人達が発していた言葉が妙に頭をすり抜けて行ったが、イブは、どうやら自分が祝福されているのだと気付いた。 「なるほど」 「なに一人で納得してんの」 真剣にニコの顔を見つめながら頷くイブの脇腹を、ククルが軽く突付く。ニコが慌てふためいているのを気の毒に思ったのだろう。つくづくククルはニコに過保護だな、と、決して人のことを言える立場でないイブは思う。 「いや……さ。なんだろう。誕生日って、こんな感じなんだなーって」 「……め、迷惑だった?」 不安げに問うニコに、イブは大きく首を振り、笑ってみせる。 「そんなわけないよ! 嬉しい」 「よかった……! 今日のために、みんなで何回か集まって準備してたの!」 「ニコがどうしてもイブの誕生日を祝いたいってね」 「みんながなんかコソコソやってたのはこれだったんだね」 「うう……ごめんなさい」 「せめてないよ!?」 ニコがすぐさま頭を下げたのを見て、イブは慌てて訂正する。そのさまを見ながら、ククルはニコニコと笑いつつ、イブに問いかける。 「どう、祝われる気分は」 「そりゃ悪かないよ。でもなんか不思議な気分だ。今まで誕生日なんて僕にはなかったし……急にそれが判明して、こうして祝ってもらえてさ。めちゃくちゃ嬉しいけど、まだなんとなく実感がわかないや」 素直に答えるイブに、ククルはそっと呟く。 「まあそうだろうね。多分、その気持ちはこの先も長いこと続くと思う。だから……その気持ちごと、ゆっくり自分のものにしていきなよ。そのうち、ぴったりはまる日が来るから」 「その点は、ククルを参考にさせてもらうよ」 「どうぞ。もうずっと一緒にいるんだ、参考にするにはもってこいでしょ」 ククルが少しの冗談を言うと、今まで料理に夢中になっていたエトワールが顔をあげてがなった。 「んあーーーー!! なんで呼び出されてまでアンタたちのイチャつきをみせらんなきゃなんないのよ!!!! パーーティするならさっさと音頭とれー!!」 「さらっと異文化織り交ぜるな君は」 ククルはため息をつきながらも、イブの方に向き直り、その手を引く。 「ほら、今日は君のためだけに集まった人がこんなにいるんだから。楽しんであげて」 「そんな上から見てないよ!」 二人のやり取りを見ながら笑う周囲の反応にへらへらとした笑顔を返しながら、イブは指定された席へとつく。間もなくアーネストによる開会宣言が行われ、謎のハチャメチャな空気を醸し出しながらも、誕生祭が幕を開けたのだった。